中国で東北地方出身の作家らが生み出す「新東北文学」が人気を集めています。なぜ今、ブームなのか。自らも中国東北部の吉林省出身で、中国文学や文化が専門の二松学舎大学講師、楊駿驍さんにその背景を語ってもらいました。
――「新東北文学」にはどんな特徴がありますか。
緩やかな文学の潮流なので厳密に定義できるものではないと考えています。それでもあえて共通の特徴を挙げてみます。
まず作家たちは、激変する1990年代の中国東北地方で少年期または青年期を過ごしたという独特な経験を有しています。その経験を文学的に再構成し、改めて中国におけるその意義、さらに現代世界におけるその普遍的な意義を問おうとする作品群、ということになります。
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――東北地方はかつて工業化が進み、国有企業が経済を牽引(けんいん)する地域でした。しかし改革開放後はイノベーションから取り残されます。東北のかつての不況と、現在の中国の不況を重ね合わせて「新東北文学」を読む人も少なくないようです。
東北で起きたことは単なる経済的な不況ではなく、社会的なもの、公共的なものが崩壊し、それに伴う底抜けの経験を人びとにもたらした点が重要です。同様に、現在の中国の不況もまた「私たちが発展と進歩を目指していろんなものを犠牲にしてきたにもかかわらず、それに見合う社会を手に入れたのだろうか、それに本当に意味があったのか」というような根本的な底抜けと反省の経験だと思います。
「新東北文学」が過去の東北…